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    自宅の庭のオリーブを掘り上げました。
    [2018年03月30日]

    突然ですが、オリーブの生産には、2種類のやり方があります。


    一つは「鉢のまま育て、鉢上げを繰り返し、鉢のまま大きくして出荷する」という生産の方法。

    小倉園はこの生産方法です。


    もう一つが、"掘りあげ物"です。


    一般的に言う"掘りあげ物"とは、小さい苗木を直接「地植え」して、太く大きくなった木を掘り上げて鉢に植えて出荷する、というものです。
    今日本で話題沸騰中の100年とか500年モノの古木オリーブも、これにあたります。


    オリーブは地植えの場合、成長スピードが驚くほど早いので、鉢植えで育てるより5倍くらい早く幹が太くなってくれます。
    ちゃんと剪定をしていれば、それはそれはカッコいいオリーブが短期間で出来ます。
    "太さ"というのは鉢植えだけではなかなか出せませんからねー...


    強いて言うなら、掘り上げて鉢に植えたあと、根っこが十分に張る前に出荷されてしまうこともあるので、上手く育てないと後々弱ったり、最悪の場合枯れてしまうこともある、と言ったところでしょうか。
    ですから、掘り上げ物のオリーブを買う場合は、しっかり根っこが張っていることを確認する必要があるわけです。
    (信頼のできる生産者さんなら、確認は不要でしょう)

    ※その点小倉園は最初から鉢オンリーで育てているので、安心ですね!笑


    さて、そんな掘り上げ物、




    小倉園も挑戦してみました!!




    今回掘り上げるのは、こちら!







    でーん。




    自宅の庭にン年前に植えたオリーブです。これはシプレッシーノ。

    珍しい品種でもないし、大きくなりすぎたのでこの際引っこ抜いてしまおう、と。

    全部で6本。






    普通、樹木はこのような大きい樹になったものを小さい鉢に掘り上げる場合、前もって9月くらいに"根回し"を行います。
    これ、言葉の響きはあんまりよろしくないですが、もともとは園芸用語です。


    簡単に言うと、縦に深くのびた根を残して、それ以外の横に広がった太い根を円を描くように全部切っちゃおうってことです。





    鉢に植えるために円形に切るわけですが、その切る部分というのが、まるで幹のようなとっても太い根になっていて、養分を吸える細かい根っこがそこには全くない状態なんです。
    そこをバッツリ切ることによって、新しく根っこが生えてくるんですね。

    そうなれば、小さい鉢に植えても大丈夫!
    横の根を切っても、縦に伸びた根を残してあるので、枯れる心配もありません。

    これが、一般的に言う"根回し"の原理です。





    で す が !





    今回は、冬に入った段階で「よし、春前に掘り上げよう」と決めたので、この作業をすっ飛ばしました笑

    本当はいけないんですよ?

    春前に、根回しもせずにいきなり掘り上げようっていうのは。




    でも、やります。

    やりました。

    オリーブ最強説をとなえるために!笑




    こうなれば、もはやギャンブルです。



    正直なところ、結構不安です笑

    (根着くかなあ...)



    ですがまあ、スペインなどから輸入されてくる100年とか500
    年モノの古木オリーブも、検疫の関係で根っこをズッパリ切って、まったく土がついていない状態で日本に入ってくるわけですから、おんなじですね。

    やってやれないことはないのです!



    と、いうわけで。




    まずは剪定から始めます。


    シプレッシーノ




    ...ボッサボサですね笑

    切ってスッキリさっぱりさせましょう。

    鉢植えにするわけですから、だいぶ小さくしないと温室の中に入りません。
    しかし...!小さくするとなると、今葉が出ている枝の下から全てバッサリと切る必要が出てきます。
    枝を残したら温室の入り口で引っかかります。



    ...よし、切ろう。

    思いきりも大切です。





    …ここが腕の見せ所です。

    今ある枝だけで、いかにカッコよく仕上げるか。
    さながら彫刻家になったような気分で切ります。


    ひたすら切ります。




    …切りました。






    うん、いい感じ!伊達に何万本も切っていません。







    みてください。バッサリです。丸坊主です。


    まあ、多分大丈夫でしょう。これに関してはギャンブルじゃないです。


    オリーブでこのくらい太かったら、新芽はわんさか出てきます。



    ...出てくるはず。




    ...ちょっと不安になってきました。



    でも切ってしまったものは仕方がない。次の作業にいきます。


    ...おっと。切り口にトップジンを塗るのも忘れずに。これで病気対策も万全です。






    掘ります。



    ひたすら、それはもう遺跡の発掘作業のように、掘ります。




    ...掘ります。











    根っこが見えてきましたね。


    ...太いですね。


    そう。このように、オリーブは根が浅く横へ横へと広がっていきます。

    幹の周辺は幹のように太い根っこばかりで、実際に養分を吸収できる細かい根はその先に集中しています。

    ですから、地植えのオリーブに肥料や石灰をあげる際は、(上の枝の幅によりますが)幹から大体1m~2m
    くらい離れた周辺に均等にまくようにすると、うまく根から養分を吸収してくれます。

    という豆知識。




    フラントイオ







    レッチーノ








    引っこ抜きました。








    こうしてみると、オリーブの根は本当に浅く横へ横へと伸びていっていることがわかりますね!

    縦に伸びている根っこはほとんどありません。

    台風で倒れてしまう理由もわかります。




    あとは根っこを切って大きな鉢に植えて完成です。



    …。(植えこみ中)



    できた!



    うーん…植えてみましたが不安定ですね。



    支柱支柱……



    !!



    支柱が無い!



    何か支柱の替わりになるものは…


    ……。



    これでいっか!



    …こうなりました笑笑






    あとでちゃんとしたものに変えます…



    …コホン。


    ...見てみて感じていただいたと思うのですが、これ、幹の太さに対して、鉢の大きさが小さすぎます。


    でも、これ以上鉢を大きくするともはや人の手では運べなくなるのでこれが限界なのです...


    つまり何が言いたいかというと、



    それはそれはもう限界に近いくらいに、



    根っこを切りつめてます。



    もはや残っているのは根っこなのか幹なのかすらわかりません。



    さて、全部で6本、すべて植え終わりました。



    シプレッシーノ





    うーん、やはり実際に鉢に植えてみるとその存在感に圧倒されますね!




    フラントイオ



    ネバディロブランコ





    あとは、新芽が出るのを待つばかり。







    (たのむ...!出ろ!出てくれ!!)









    なんやかんやで春。












    で、でたー!!




    これで一安心。





    シプレッシーノ







    やっぱりオリーブ、強いですね~!


    あれだけカラ坊主にして、あんなに根っこを切ったのに、それをものともしない生命力!!


    この強靭さもオリーブの魅力のひとつです!



    これはもう、オリーブ最強説、いける気がしてきました笑




    …。




    そして1年経った現在!




    ネバディロブランコ




    根っこもしっかりと張っていて、枝葉もイキイキ!



    うんうん、いい感じにカッコよくなりましたね!



    それ以外の5本は…



    すべて業者さんに持って行かれてしまいました笑



    それはもう本当に風の如く、あっという間の出来事でした...笑



    もちろんちゃんと根付いているのは確認済みです!








    写真を見てわかる通り、一気に同じ箇所から芽吹いたので、枝は絶賛密集状態です。

    ここから、よく伸びてくれそうな元気な枝を選抜して、そのほかの余分な枝を落とし、樹形をかっこよく整えていけば完璧です!


    ですがおそらくこの最後の1本もその段階まで行く前に、業者さんに即持ってかれてしまうことでしょう…笑


    なんとも言えない思いもありますが、売られた先で元気に育ってくれるのならそれが一番です!


    (ちなみにこの最後の1本も予想通り、この記事を書いた約1ヶ月後に、ものの見事に持っていかれてしまいました笑)




    いかがでしたか?

    ちょっとしたことですが、こんなドラマもあるのです。


    もし、どこかで太くてガッチリしたオリーブの鉢植えを見かけた際は、生産者の目線で見てみる、そんな楽しみ方も、ありかもしれませんね笑